ラウドネスノーマライゼーションとは
既にご存知のお方も多いと思いますが、YouTubeなどのストリーミングサービスにおいては、それぞれの音楽や、動画における音量差がアンバランスになってしまうことを避けるために「ラウドネスノーマライゼーション」という仕組みが導入されています。
簡単に説明するなら「音量を一定の聴感上の大きさに揃えることを目的として、大きすぎる聴感上の音量を一定以下に揃える」という仕組みです。
とはいうものの、YouTubeにアップされている動画コンテンツにおいては「音量が聴感上の一定の大きさに揃っていない」というのが現状です。なぜなら、プラットフォームであるYouTube側が基準としているラウドネス値に見合った調整をしないままに各々が動画をアップロードしてしまっているからです。
これは視覚的に確認することができます。まず、対象とする動画ページに行き、動画の上を右クリックして「詳細統計情報」を開いて見てください。するとその概要が表示されます。そのなかのVolume/Nomalizedの欄にある(content loudness)の数値に注目してください。例えば、ここに8.8dBと表示されていたとすると、その動画はYouTube側が基準としているラウドネス値よりも大きなラウドネス値で調整済みの動画をアップロードしてしまったために、8.8dB下げられているという意味になります。
あなたがYouTube Creatorでしたら、動画コンテンツをアップロードする前にそのコンテンツのラウドネス値をあなたが実際に計測してみることをおすすめします。「Youlean Loudness Meter」は無料で手に入るラウドネスメーターです。有料版もありますが、無料版で十分計測することができます。また、こちらのウェブサイトでは「ラウドネスノーマライゼーション:How to Edit a Video to Achieve Good Audio Loudness on YouTube?」についてのより詳しい情報が記されており(英語ですが、ブラウザの拡張機能でGoogle翻訳を追加し、使用すれば日本語でも読むことができます。またはこちらからも日本語で読むことができます)、その理解に役立つ十分な知識が得られることでしょう。
更により深く、詳しく知識を得たいのなら「書籍:とーくばっく 第3版」を一読されることをおすすめします。名著です。
例
次の3つの動画を比較してみてください。
・オリジナル
・ダイナミクス優先でマスタリング処理したもの(限定公開設定にしてあります)
・ノーマライズ優先でマスタリング処理したもの(限定公開設定にしてあります)
いかがでしたか。
わたしたちは実験をするするために、YouTubeからこのオリジナル動画を「yt-dlp」を使ってm4a ファイルをダウンロードしました。このオリジナル動画の音声を解析すると、そのラウドネス値は「-23.89LUFS」でした。この値はテレビ放送業界の基準値(こちらを参考)に近いものです。詳細統計情報をみると(contents loudness -9.9dB)となっており、基準値よりも-9.9dB小さい音量で調整されて制作された動画であることがわかります。実際に聴いてみても、YouTube上の他の動画コンテンツに比べて音量が小さいことがわかります。
そして次の動画はオリジナル動画からオーディオファイルのみをWAVファイル形式で書き出し、ダイナミクス優先、ノーマライズ優先でマスタリング処理した後、Adobe Premiere Proにインサートしてオリジナル動画の映像と再び組合せて、H.264形式でレンダリングして書き出したものを、YouTubeにアップロードしたものになります。実験、検証用としての動画ですが、「Economics Explained」からリクエストがあった場合、著作権侵害で削除される可能性があります。その時はどうか、ご容赦ください。
それはあなたが判断してください
「ダイナミクス優先」か「ノーマライズ優先」か、は少し難しい問題です。誰にとって良い音なのか。その誰を誰として想定するのかによるからです。そしてこれは制作者側に決定権があり、制作者側が何を求めているか、その考え方にもよるのですが、こういった「アナウンサーのトークがメインの動画コンテンツ」においては「ダイナミクス優先」よりも「ノーマライズ優先」の方が、視聴者にとっては落ち着いて長時間聴くのには適していると思うのですが、いかがでしょうか。